2018年5月7日
高校3年生の発達障がいの男子生徒と出会いました。
3年生になり、担任が変わり、父親が韓国に単身赴任になり、いろんな環境の変化から教室に入れず、保健室に来るようになりました。
夏休み中も、毎日授業があり、毎日、保健室に来ていました。
授業もなかったので、毎日、その子と関わることができました。
話していると、いろんなことを考えているし、大人の観察力も優れていました。
いろんなことに疑問を持っていたので、ずっと質問をしてきていました。
その質問が、大人たちをイライラさせてきたのかもしれません。
納得いくまで、毎日、話しました。
ただ、質問すると返事に時間がかかりました。
そこで3秒ルールを決めました。
答えは決まっていても、こう言ったらどう思われるかを考えていくうちに、だんだん自分でもわからなくなったり、結局、最初に思ったことに戻ったりします。
すぐにできるわけではありません。
私も、同じような感じで、考えているうちにわからなくなるというのがよくわかります。
では、何を考えているのでしょうか?
結局、人がどう思うか?ということを考えてしまいます。
相手にとって、どれが正解なのか?を考えているのです。
相手の顔色をうかがいながら、こう言ったら相手はどういう反応をするのだろうと考えています。
でも、考えたところで、相手の思っていることなんてわからないのです。
案外、ふと思ったことが、相手の思っていることだったりします。
いくら考えてもわからないのだから、パッと頭に浮かんだことを言えばいいだけなのです。
そんな話をして、すぐにできるわけではありませんでしたが、だんだん返答がはやくなり、半年後には、ほぼ3秒ルールができるようになりました。
頭の中でゴチャゴチャ考えていると、そのゴチャゴチャが伝わり、相手を不快にしてしまいます。
これだけで、人間関係も変わってくるのです。
半年で、こんなに変わるのだと思うぐらい変わりました。
まわりの大人たちも変わりました。
いちばん変えたのは、担任だったかもしれません。
あつい思いを持っている先生でしたが、まわりの先生とも、生徒ともうまくいっていませんでした。
この子と向き合ううち、いろんなことが変わり始めました。
思いはあるけれど、どうしていいかわからないというのが正直な気持ちだったのかもしれません。
その先生の授業を抜けてくる生徒も多かったです。
保健室にいると、決まった先生の授業を抜けてきているのがわかります。
その先生が変われば、抜けてくる生徒もいなくなりましたし、保健室をよくのぞいてくれたり、意識が変わりました。
授業されている声を聞いても、以前のようにイライラした声でなく、心地よい声で授業されています。
授業を抜ける生徒は、教師の声が凶器のように聞こえるのです。
イライラした声をしている先生って、意外に多いのです。
いつもイヤホンをつけて音楽を聴いている生徒は、このタイプが多いです。
人の声が耐えられないのです。
先生に限らず、大人のストレスを受けた生徒の声も、凶器に思えます。
発達障がいの子は、声や雰囲気で、その場にいられなくなります。
私も敏感な方なのでわかります。
そのイライラの原因は、自己否定心です。
自分で自分を責めている人が多いです。
その担任の先生は、その子と関わる中で、自信がもてるようになりました。
数か月後に、その子に対して、「先生は、君に対しての思いがあふれてくるようになった」と話していました。
どう接していいかわからず、何かしてあげたいという思いがなかったそうです。
それが、いろいろやってあげたいと思うことが増えたそうです。
その子にとって、最初は苦手な先生の1人でした。
でも、苦手な人に意見が言えるようになったら、誰に対しても言えるようになると、自分の思いを伝える練習を日々していました。
最後には、この学校でいちばん嫌いな天敵と言っていた先生にも話に行くようになりました。
近くまで行って帰ってくる、自分の意見を言って、すぐに否定されて帰ってきたり、いろんなことがありました。
失敗を繰り返すうちに、自分が思っている通りになっていることに気付き、「どうせだめって言われる」と思いながら行っていたのが、その不安、恐怖、心配事をとっぱらって、自分の意志をもっていくと、成功するというのがわかってきました。
卒業して、大学に行く前に、もう一度来校しました。
進路について不安に思っていることがあり、親にどのように伝えたらいいか、相談しに来てくれました。
うまいこと言おうとしていたので、それではうまくいかない。
いろんな先生で練習してきたのだから、お父さんとお母さんにも自分の思いを伝えられると言うと、自信を持って帰りました。
驚いたことに、自分で大学に問い合わせの電話をして、準備をしていました。
ただ、3秒ルールで、考えるのをやめただけで、大きく変わりました。
先生方からは、合格する大学がないと言われていましたが、いちばん行きたかった大学には落ちましたが、あとは全部受かったそうです。
受験校も、ネットで自分で調べ、エリアを広げて、通える大学を探しました。
これは、コミュニケーション能力をあげたい人にとっても有効です。