ブログ

2018年5月18日

医療現場

 

 平成9年から、病弱教育巡回訪問指導員をしました。

 県内の院内学級がない病院に派遣され、学習支援を行う仕事です。

 最初の頃、病院に制度の啓発活動に行きました。

 病院長、理事長など、ふだんお会いしたり、お話しする機会のない方々から、いろんなお話を聞かせていただきました。

 その頃、産婦人科医、小児科医が少なくて困っているという話を聞きました。

 少子化で、仕事がなくなることを見込んで、産婦人科医、小児科医になりたいと思う医者がいなくなっているとおっしゃってました。

 

 それから10年後、医大の教授や小児科医の方々とボランティアを通し学習会を開いたりして、医療現場のお話を聞きました。

 

 最近は、どこの市町村も子どもの医療費無償化をうたい、住民を増やそうとしています。

 ちょうどその頃、子どもの医療費を無償化にした地域の市立病院の小児科医がおっしゃっていたことがあります。

 無償化になり、料金を気にすることがなくなって、病院の診療時間に受診せず、夜間診療にくる患者さんが増えたそうです。

 仕事を休まなくてもいいからという理由かもしれません。

 結局、一晩中、診察することになるそうです。

 それに加え、県内のどこかの病院で、緊急の手術が入って、救急の受け入れ不可になると、他の病院にまわされてくるので大変だそうです。

 とくに、子どもの場合、症状がわからないことが多いので、1人に対して時間がかかるそうです。

 小児科医は少ないので、結局、仮眠する時間もなく、そのまま、診療時間が始まり、24時間、眠る時間もなく診察するそうです。

 そんななかで、少しでもミスがあると、医療ミスだと訴えられると話されていました。

 勤務医は少ないそうです。

 開業医は多いので、開業医の協力を得て、何とかまわっているとはなされていました。

 開業医の方も、子どもの場合、大人と違って、どこが痛いのかもわからずに治療しなければいけないので、わりにあわないと言ってました。

 

 たしかに、あの頃から、急にあちこちの個人病院ができるようになりました。

 まずは個人病院で診察を受けて、大きな病院に行かないと手数料をとられるようにもなりました。

 

 医大の精神科の訪問指導にいっていたときは、精神科を目指す学生はいても、途中で挫折してしまい、精神科の医師が育たないと聞きました。

 

 医療費の制度が変わり、手術をしたり、薬を処方しないと病院が儲からないようになったそうです。

 医大では、長期治療をしたいけれど、3週間以内に退院させないと赤字になるしくみになって、赤字になってもいいと思ってやっているけど、どんどん下の病院に転院させなければいけなくなったと嘆いておられました。

 精神科医は、薬を処方しない方がいいとわかっていても、検査も手術もないと、赤字になるから薬を処方しろと言われて仕方なく処方するけど・・・と嘆いていました。

 

 最近は、大量の薬を処方する病院が多いです。

 薬にくわしい人がこれとこれ、同じ効能だと指摘すると、薬が減ったという人もいます。

 不登校訪問支援員をしていた頃、精神科に通うお母さんに多く出会いました。

 薬がどんどん増えて、なにがなにかわからないぐらい飲んでいると言ってました。

 精神科医の話を聞いていただけに、こわいなあと思いました。

 

 

 最近は、外科医も減ってきているそうです。

 医師の高齢化も問題になっています。

 

 そのときの話題で、医師不足と言っているけれども、夜間の救急病院の数は、全国でみても恵まれているということでした。

 

 岩盤規制ということばが加計学園問題で、よく聞かれるようになりました。

 役所や業界団体などが改革に強く反対し、緩和や撤廃が容易でない規制を言います。

 特に、医療、農業、教育、雇用の分野に多いのです。

 

 獣医学部の話題は、加計学園問題で報道されています。

 医学部の場合は、どうかというと、1970年代の田中角栄内閣のときに、各都道府県に1校の医科大学設置をし、1979年 琉球大学医学部を最後に、新設医学部はありませんでした。

 2016年4月 東日本大震災の復興支援で、東北医科薬科大学が新設されました。

 琉球大学医学部から38年たち、2017年4月 成田市が国家戦略特区になり、国際医療福祉大学医学部が新設されました。

 

 獣医学部もそうですが、医学部の新設がなかったということ、教育の質の低下に加え、学費が高くても生徒を獲得できていたそうです。

 国際医療福祉大学は、設備面も充実し、教員も充実、そして私学の医学部の中で学費がいちばん安いそうです。

 

 子どもの減少で、大学に入学することは簡単になりました。

 しかし、卒業するのが難しい生徒が増えました。

 医学部は学費も高いですが、6年間で卒業でき、医師になれるのは少ないそうです。

 留年する生徒が多いそうです。

 今までよりも学力が低くても入学できるようになったこと、指導教員の指導力も悪く、わざと留年させて、学費をとろうとしているのでは?という人もいます。

 

 医師不足は、これからますます深刻になるのかもしれません。

 

 10年間、医療現場で表も裏も見てきました。

 その頃、国立大学病院が、独立行政法人の一形態である国立大学法人に変わりました。

 週1回、カンファレンスで医師や看護師長と話していると、国家公務員でなくなったから、病院が稼がないと、お給料が減るのかな?という話もされていました。

 ちょうど病院の建て替え時期で、青写真ができたと言ってましたが、それと同時に、やっぱり儲けを出さないといけないよね、できるのかな?という話題もありました。

 

 いろんなことが変わり始めた頃だったのかもしれません。

 医師というと、あこがれの職業だったかもしれませんが、あれから20年が経ち、ずいぶん変わりました。

 

 大学の生き残りをかけ、新設大学ができている一方、倒産する大学が増えると言われています。

 国立大学法人が、合併するという話もでています。

 私学だけでなく、国立大学法人も、大きな転換期になってきているのかもしれません。